研修は関わる人々の主体性や思いによって支えられていると、先に述べました。ここでは、研修でより大きく、より密度の濃い成果をあげるために、受講者、教育担当者/部署、講師、組織それぞれが発揮すべきチカラについて触れます。
その前に1点、各人員のチカラを最大限に発揮するために必要なものがあります。それはやはり意識の統一と一体感であり、具体的には人材育成計画がもっとも大きな影響力を持っています。
経営理念や戦略に即した人材育成施策があるか、研修の目的は明確か、社内の他の研修とのリンク・シナジーは見えているか、評価制度といった既存の制度との関連はあるか…
ぶれることのない指針として、判断の際の指標として、そして成長や発展への動機付けとして、体系的な人材育成計画があってこそ一丸となって取り組めるのだという点は、あらためて押さえておきましょう。
1)受講者のチカラ
受講者の目的意識や主体性は研修の学びに大きく関係します。「牛を水飲み場につれていくことはできても飲ますことまではできない」等の表現が用いられるとおり、受講者が研修に対して前向きな姿勢があると無いとでは大違いです。
最近の傾向としては後ろ向きの姿勢をあからさまに出す受講者は皆無に等しいほどなくなりました。ただし、マルチタスクで講座内容を聞いている振りで実際は別のことをしているという受講者は今もいます。
人は自分に関係あることには興味や関心がありますが、他人事になるとその興味は極端に薄れます。主体性を持って参加されていても、事前に聞いていた受講目的の違いや、講師の進め方によって、心の在り方も変わってくるでしょう。よって、講師をはじめ関係者のアプローチや環境設定は大事です。ただしどのような状況であっても、まずは今起こっていることは自分事であると考え、主体的に参加することが受講者には望まれることです。
2)教育担当者/部署のチカラ
研修を成功させるためには、教育担当者やその部署の意識や事前の準備も非常に大切です。
まずは、研修の目的はもちろんですが、受講者に何を理解習得してもらい、どのような行動や結果を出してもらいたいのかを明確にしなければなりません。研修のゴールイメージや受講者の将来の姿をしっかり持てているか、これは研修成功の鍵となるだけではなく、受講者の事前の動機付けや参加意欲の向上にも大きく貢献するでしょう。
そのためには、前提として人材育成計画が必要なことは前述の通りです。これに加えて、現場のニーズに合っているか、という視点も大変重要です。ヒアリング調査など、やり方は様々にあると思いますが、ぜひ、課題に直面している現場の声に耳を傾けていただきたいです。研修内容とのマッチングに加えて、研修に対する現場の理解獲得にもつながります。現場との連携がスムーズか否かも、研修の成果を高めるためのポイントです。
教育担当者の関わる範囲は非常に広いですが、組織の幹を育てる、意義ある大仕事を担当しているという誇りと責任、そして熱意を持ち続けてほしいです。それこそが、教育担当者にとって最も大切な意識でしょう。
3)講師のチカラ
講座を成功に導く講師のチカラをもし一言で表すなら、“支援力”であると言えます。
研修参加の目的は同じでも、受講者ごとにさまざまなゴール設定があります。また、その日のバイオリズムで最大のパフォーマンスが出せない受講者もいます。コミュニケーションの理解としても人それぞれであり、多くのメンバーの状況や理解度に合わせて講座を運営することは実際のところ非常に困難なことです。
しかし、講師は受講者に対して、「一部のメンバーに理解してもらえば」と思うのではなく、「一人一人の受講者に歩み寄り、理解し、抱えている問題や課題に共感し、支援してあげたい」という気持ちを持って、一緒に考えてあげなければなりません。
講師も受講者が期待するすべての知識を持っているわけではありません。しかし、一緒に考える姿勢そのものが受講者の主体性を向上させます。研修ですので、知識やスキルを提供することは当然大切です。ただし同様に受講者の主体性を向上させられるかも非常に重要なことではないでしょうか。
また、受講者が課題発見や課題の解決方法に気づくためには“仕掛け”も大切です。グループ討議で他メンバーの意見から気づくこともあるでしょうし、そのテーマにおいて研修講師が伝えたまとめや着地から理解できることもあります。支援をしたいという思いと共に、研修において効果的に学ばせるための仕掛けづくりも講師には重要であると考えます。
4)組織・環境のチカラ
研修成果を最大限に出すためには組織の協力が必要不可欠です。
特に、評価制度や目標管理項目と研修内容とがリンクしていないと、研修で学んだことを活かす場面がなくなります。「使われない能力は磨かれない」といいますが、研修企画を行うときは、学んだスキルをいつ使うのかを明確にし、しくみとして現場に取り入れることが大切です。
また、経済環境が厳しい現代社会においては、研修で既存の手法を改善するより、新たな考えを用いた知識やスキルをお伝えすることの方が多くなっています。例えば一時流行りましたコーチングスキルやリーダーのエンパワーメント等です。
しかし、この点に対して、現場の上司やチームが理解していないと、同様に使う場面がなくなります。
研修の目的や内容を事前に現場にも伝えて理解をしてもらい、受講者が行動しやすい環境をつくっておかなければなりません。
合わせて、スキル定着や成長促進には、チームの仕事の進め方とも連動した継続的な実践が重要だと考えます。そのためには、単発的な研修よりも現場での実践期間を設けた連続性の研修が好ましい、という点も考慮いただければと思います。単発的な研修が悪いわけでは決してありませんが、実践期間がないため、成果の確認をしにくいという側面があります。
より現場に密着した学びを深めること、これが組織・環境がなせる最大のチカラです。